第116回 あつみにこんさーと
アンビエント・パンソリ&人形劇 2025夏 渥美半島特別公演

チェリストはボソボソと語りだした。自分でも認めるように、聞きとりにくい。
聴衆は耳をそば立て、身を乗り出すようにして言葉の断片を拾い、頭のなかで意味を組み立てていく。気がつくとチェリストの術中にはまっている。
そして演奏がはじまる。やはりボソボソと語りかけるような出だしだが、すぐに、その柔らかな音色に包まれて、聞き手は音楽の海に漂っている感じになる。意味なんていうまどろっこしいものは消え、世界がじかに感じられる。
ウンシルさんの声、スーホさんの人形の動き、文化の壁を超え、世界の根源に連れて行かれたようだった。
四家卯大はお父さんも著名なチェリスト。つまりチェロの音色を母語として育った。宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」の話をしていたが、チェロと一体化しているのだ。
数年前、「瀕死の白鳥」で酒井はなさんと共演したとき、チェロは白鳥と対話していた。
この秋、泉鏡花の「高野聖」を佐野史郎が朗読し、四家卯大が即興で伴奏するという。



今回のコンサートのプログラムです。

全国版のチラシです。

今年度も あつみにこんさーとのスタッフとして、田原市立福江中学校のボランティアグループ「ドリームの会」より5名の生徒さんが来て下さいました。
まずは事前打ち合わせから。

会場の椅子並べです。
今回はステージをぐるっと囲むように設置します。


こちらではプログラムの綴じ込み作業を行っています。

文化会館の玄関に設置されたウェルカムボードがお客様をお迎えします。

受付担当のスタッフさんです。
皆さん、よろしくお願いしま〜す!

こちらは、ホール入り口でお客様をお迎えする生徒さん。
よろしくお願いしま〜す!

開場時間前にもかかわらず、お客様が次々とお見えになりました。

開場時間となり、ホール内へと入場されるお客様。

小さなお子様連れのお客様も。


ホール内には、スーホ・ムーンさん作の漫画「水宮歌 スグンガ」の原画(韓国語)が展示されています。

こちらは日本語版「水宮歌 スグンガ」の冊子で、大まかなあらすじは次のようなものです。

「海の王である竜王が病気になり、ウサギの肝が特効薬だと知ります。
そこで、忠義者のカメが竜王を助けるためにウサギを騙して、海の宮殿に連れて来ます。
竜宮で肝を取られそうになったウサギは、肝を家に置いてきたと嘘をつき、再び陸地に戻り、竜王の企みから逃れることができました」

本日の司会はスタッフHさん。
よろしくお願いしま〜す!







今回は“アンビエント・パンソリ&人形劇 2025夏 渥美半島特別公演”
前半ステージは、四家卯大さんのチェロ独奏です。
オープニングは、パンソリ歌唱人形劇 水宮歌(スグンガ)より
「パレット」



第78回ロビーコンサート以来、9年振りのご出演となられる四家さん。
現在は、様々なロックバンドとの共演やストリングスの編曲・演奏等、幅広く活躍されているそうで、何と!あのミスチルのバックストリングスも務めておられるとか。
私事ですが、最近公開された映画「雪風 YUKIKAZE」のエンドロールに四家さんのお名前を見つけたときはビックリでした!

次は、バッハ作曲「無伴奏チェロ組曲第1番」
全6曲からなる作品ですが、まずは1曲目「プレリュード」
なおこの曲は、前回ご出演時にもこのステージで演奏して下さいました。
耳に馴染んだメロディーが心地良いです。

続いて、ドイツ風舞曲「アルマンド」、そしてフランス風舞曲「クーラント」
リズミカルな曲想に心躍らされます。



ゆっくりしたスペイン風舞曲「サラバンド」
続いて、フランスの農村風の「メヌエット1番2番」
そして、チェロ組曲最後の曲は、イギリス風の「ジーク」
たった1台の楽器からこんなにも奥深く美しい音色が奏でられるなんて、感動です!




四家さんのオリジナル「インドのとらがり」
この曲も以前こちらで演奏して下さいましたね。
次の、宮沢賢治 作詞・作曲「星めぐりの歌」では四家さんの心温まる優しい歌声が・・・
最後は2曲を続けて。
平和への願いを込めて作られた曲 P・カザルス作曲「鳥の歌」
そして、サンサーンス作曲「白鳥」の演奏で、前半ステージの幕が閉じられました。

ここで20分間の休憩となります。
水分補給のため、こちらで紙コップ入りのコーヒーやお茶、水などを用意させていただきました。

多目的ホール2階より。
ラウンジにはこんなにも大勢のお客様が!


後半ステージは、ウンシル・ノさんによるパンソリの歌唱。
オープニングは、四家さんのチェロを交えた即興演奏から始まりました。
パンソリとは、本来は太鼓を叩く鼓手と、歌と語りや身振りで物語を表現する一人の唱者によって演じられる、韓国の伝統的な庶民演唱芸能です。
2003年にはユネスコの無形文化遺産に登録されました。


韓国から来られたパンソリの歌い手、ウンシルさん。
ハルモニウム(小さなアコーディオンのようなリードオルガンの一種で、インドで独自に発展した楽器)やキーボードの弾き語りによる熱演です。
次の曲は、元々は韓国のお祭りで歌われてきたものを、ウンシルさんが先祖たちの生命を愛する心を受け、新しく作り直されたとか。
「皆様に静かな平和のひとときを届けられますように」とのメッセージを日本語で伝えて下さいました。

次は、ウンシルさんにとって永遠の友であり家族でもあったラブラドール犬が天国へと旅立ってしまい、その彼女への想いを歌にしたもの。
身振り手振りを加えながらの、力強く繊細なウンシルさんの歌声に圧倒されてしまいます。




ここからは、スーホ・ムーンさん作・演出による人形劇。
なお、今回は全国ツアーでの「水宮歌 スグンガ」ではなく、別の内容となるそうです。
ちなみに、スーホさんとウンシルさんはご夫婦。
お二人のあうんの呼吸で、人形に命が吹き込まれます。
この人形の名前は「イヌイット」と言うそうで、家族を守るため極寒の地で釣りをする強い父親の姿なのでしょうか。

人形の繊細な動きに目が離せません。
四家さんの、その場の雰囲気に合わせた即興演奏も素敵ですね。

次は、カルマ(業)
彼が登っている先には何があるんでしょうか?

このお顔、超ユニークですよね。
名前は「ガチャガチャ」なんだそうです!
これらの人形はすべてスーホさんによるオリジナル。
まさに個性が爆発しています!
プログラム最後は再びウンシルさんの歌で、伝統的なパンソリの曲
「フラワーソング」

ここで、ドリームの会の生徒さんより出演者の皆さんへ、花束が贈られました。





客席からの盛大な拍手に応え、アンコールは韓国の伝統的な曲
「オリアン」
韓国語でオリアンとはレッツゴーという意味だそうで、コンサートのフィナーレを飾るに相応しい、とても華やかで楽しい歌ですね。
ウンシルさんに合わせた客席からの手拍子も加わって会場がひとつとなり、華やかに あつみにこんさーとの幕が閉じられました。

コンサート終了後はスタッフ一同でお客様をお見送りします。
ご来場誠にありがとうございました。





こちらではCD販売とサイン会、グッズ等の販売が行われました。
手前にはガチャガチャも!


最後に、出演者の皆さんと共に記念撮影を行いました。
素晴らしい演奏とパフォーマンスを、ありがとうございました。
皆さん、お疲れ様でした!